令和4年度経常研究テーマ一覧

機械・材料技術部

酸化チタン粒子の液相合成

酸化チタンは屈折率が高く化学的に安定であることなどから、白色顔料として広く使用されている。また、紫外光照射下において、有機物分解や表面超親水性化の光触媒作用を示すことが知られている。本研究では、液相合成法により、形状に特徴のある酸化チタン粒子を得ることを目的とする。

Phase Field法によるマルテンサイト変態の組織形成シミュレーション

近年、計算機性能の向上によりPhase Field法やCALPHAD法などの“計算材料科学”を活用した金属組織の予測が可能となってきている。計算材料科学を活用した材料開発の効率化は今後さらに活発になることが予想されるが、未だ一部の大企業や大学などに活用が限定されているのが現状である。Phase Field法は材料組織形成過程を定性的に予測・可視化するために非常に強力な手法であり、導入することができれば材料開発・評価の効率化に寄与することが期待される。そこで本研究では、現在我々が実験による研究対象としている材料に対してPhase Field法を適用することで研究を推進するとともに、Phase Field法をKISTEC内で利用する際の課題を明らかにし活用方法を模索することを目的として研究を行う。

燃焼合成したCa-α-SiAlON粉末の焼結とその評価

SiAlONは反応焼結法で作製する方法が一般的であり、α-Si3N4、AlN、Y2O3、Al2O3を原料粉末として用いるため、所望の特性を有するSiAlON焼結体を得るためにはそれぞれの添加量や焼結条件などの検討が必要となる。一方で燃焼合成法ではSiとAlを窒素雰囲気中で燃焼しα-SiAlON粉末やβ-SiAlON粉末を得ることが出来る。これらの燃焼合成SiAlON粉末を原料として焼結体を作製することで材料設計が比較的簡易となる。本研究では燃焼合成法で作製したCa-α-SiAlON粉末へ焼結助剤として異なる量のSiO2を添加し、ホットプレス法で焼結を行う。燃焼合成Ca-α-SiAlON焼結体の構成相及び機械的性質を評価することで、焼結条件と機械的性質の関係を調べる。

アルコール系液体潤滑下における各種硬質薄膜の摩擦摩耗特性評価

EV・HV等に代表される次世代型輸送機器の燃料や潤滑油に対しては,高温かつ極圧の摺動環境が緩和され,そのうえで環境性能の向上が求められることから,生物由来で産生可能なアルコール系液体の需要が高まっている.これまでにエステルや有機酸潤滑下において,DLC膜が低摩擦を示すことを明らかにしているが,今後需要が見込まれるアルコール系液体や,その他の硬質薄膜を用いた場合についての知見は少ない.本研究では,アルコールおよびポリオール等のアルコール系液体潤滑下における各種硬質薄膜の摩擦摩耗特性について評価する.具体的にはボールオンディスク試験による摩擦係数の経時変化,および摩耗量計測を実施し,実使用に適した組合せを提案する.

X線非破壊検査における計測事例の有益なアーカイブ化に関する研究

当所におけるX線による非破壊検査の分野には、これまで様々な要求があり、いりいろな方法で対処してきた。日常的な技術支援活動においては、それぞれの担当者の記憶に頼ることが多くデジタル化されておらず、同様の苦労を何度も行うなど非効率的である。今後の将来にいつなんどき後継者が現れても良いように代表的な事例をアーカイブし、技術相談から試験の方法について、効率よくマニュアル化できるようなシステムを検討し実際の技術支援活動において試行しながら支援事例を蓄積する。

異なる粒度分布計測法の相互比較

KISTECでは、粒度分布評価におけるお客様の多様なニーズに応えるべく、2008年度に動的光散乱式装置、2018年度に光顕による粒子画像解析装置を導入し、さらに現在、新規装置の導入や測定メニューの拡充を図ってワンストップ化を目指している。そこで、各種測定法で得られる結果を系統的に比較検討して、お客様に分かりやすく紹介するデータの収集を行う。

デジタル画像相関法を用いたひずみ分布測定技術の開発

構造物の設計における安全性を確保する上で、構造物に発生するひずみの測定は不可欠である。現在、ひずみ測定ではひずみゲージを用いる手法が一般的であるが、一つのひずみゲージから得られるひずみ値は一点一方向のみであり、多点や多方向の情報を得るためには、多くのひずみゲージを測定物に設置する必要があり、時間やコストが課題となる。ひずみゲージに代わるひずみの計測手法として注目されているデジタル画像相関法(DIC)は測定に際し計測物の画像の撮影のみと簡易で高精度な計測が可能である。そこで、本研究ではひずみ測定の新たな手法の提案を目指し、ビデオ伸び計を利用した所内DIC技術開発を目的とした。

新規導入EPMAを用いた微小領域・微量分析技術の検証

情報通信技術や自動運転技術の発達に伴って機器の小型化、高集積化、高性能化が進んでおり、これに伴って微小領域における高精度分析技術の重要性は益々高まっている。本研究では新たに導入した最新型の電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analysis)を活用して微小領域分析、微量元素分析の技術を確立し県内を中心とする製造業の発展を支援する体制を確立することを目指す。

セラミックス材料のマイクロスケール力学特性評価プロセスの高度化

セラミックス材料本来の力学特性を理解することは、高信頼性化のための定量的な材料設計の大きな一助となる。本研究では、材料を構成する粒子や粒界の破壊の理解を深化する手法として、マイクロスケールの微小な片持ち梁状試験片の曲げ試験(マイクロカンチレバー試験)と、EBSD解析やTEM観察とを連携させたプロセスの確立を目指す。

光コヒーレンストモグラフィーによる粒子懸濁液の乾燥過程の可視化

セラミックスの湿式成形や、化粧品やインクなどでは、粒子懸濁液の乾燥によって形成される粒子集合構造が製品特性を左右する。しかし、乾燥特性と粒子集合構造の相関関係は明らかにされていない。本研究では、乾燥特性の標準的スケールである乾燥特性曲線の測定に加え、波長掃引型光干渉断層計(SS-OCT)によるリアルタイム2D断面/断続的3D構造観測で粒子懸濁液の乾燥現象の実態解明を目指す。

電子技術部

半導体カーブトレーサを用いた電気-熱連成解析用デバイスモデルの作成

パワーデバイスの電気-熱連成解析を行うためには電気および熱的なデバイスモデルを作成する必要があるが、本研究では電気的なデバイスモデルの直列抵抗成分の温度依存性を計測する手法について検討を行う。
方法としては以下のとおりである。
・半導体カーブトレーサを用いて、室温から250℃までの温度範囲でI-V特性を測定する、自動測定メニューを作成する。
・この測定メニューによるSiCショットキーバリアダイオードの測定結果から、カーブフィッティングによりデバイスパラメータのあわせこみを行う手法について検討を行う。
・取得したデバイスパラメータを用いて、熱過渡解析やパワーサイクル試験のシミュレーションを行い、実サンプル(市販のパワーモジュール)を用いた測定との比較を行う。

3次元積層実装に向けた接合部形成に関する研究開発(フォトリソグラフィおよびスパッタ)

近年、半導体の高密度化には例えば2.5次元および3次元積層実装が求められており、装置メーカー、材料メーカー、公設試、大学、産総研等の研究共同体を構築し、これら2.5次元および3次元積層実装を検証するためのTEG作製法の構築が本研究のテーマであり、本研究では、薄化後のダイシング技術に向けて、10um厚Siウェハのハンドリングおよび作製プロセスの構築として、薄型ウェハでのフォトリソグラフィおよびスパッタプロセスの確立を目指す。

粉末HSQを用いた電子線描画技術の開発

Al薄膜を用いたプラズモンデバイスの開発では,塩素ガスを用いたドライエッチングが不可欠である。しかしながら,一般的な高分子系電子線レジストは塩素ガスに対する耐性が低いため,Al薄膜上に成膜した酸化シリコン薄膜に電子線描画したパターンを転写する必要があり,SiO2の成膜とドライエッチングの2工程が必要となる。そこで,本研究では,ドライエッチング耐性が高いSiOxを構造式に持つ電子線レジストに用いて,SiO2の成膜とドライエッチングの2工程を省略し,プラズモンデバイスの開発スピードを上げる技術の開発を目指す。

電子線描画を用いた光学回折素子構造の試作

光学回折素子(DOE:Diffractive Optical Element)は光の回折を利用してレーザー光を所定のパターンに変える素子であり、電子線描画を利用した微細加工の開発対象のひとつして着目されている。光学回折素子用のレジストの厚みに分布をもつ3次元構造は通常の電子線描画でのパターン形成よりレジスト厚みの制御が必要な点で作製が難しくなるので、これを検討する。光学回折素子用のレジストの3次元構造は電子線描画装置を用いて多諧調的な描画を行って作製する。この3時点構造の作製の難易度が高いため、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面形状の評価を行い、電子線描画での作成条件を検討する。

5Gを含む無線周波数帯域の電磁界分布可視化システムの開発

現在、携帯電話やWiFiなどマイクロ波帯域の電波を利用した無線通信システムが広く利用されており、今後さらに高速低遅延化が進展する。しかし、電波は目で見る事ができないため、通信がつながりにくい場所を特定することは難しく、場所によっては遅延が発生する可能性もある。本研究では、5Gを含む無線通信システムの通信環境における電波状況を確認するため、電磁界分布可視化システムを開発する。この可視化システムを利用することで、無線システムごとの電波状況を確認することができ、更に、電波状況を改善するための電磁波シールド材料や電波吸収体を施工した場合の効果ついても検証することができる。

機械学習とソフトウェア無線を用いた電波環境評価ツールの検討

産業や医療分野における、無線通信・電波利用は、加速の一途を辿っている。工場をはじめとする生産現場では、装置の監視や遠隔操作などに無線通信が用いられている。また、医療分野においては、バイタルの遠隔モニタリングや医療機器等の遠隔操作・監視に無線通信が用いられている。一方、無線通信の安全な利用においては、電波環境の定期的な測定と評価が望まれるが、それに付帯するコストや技術面が課題である。本研究では、電波環境を低コストかつ容易に測定・評価可能なツールを検討し、前述の環境での無線通信の安全性および信頼性の向上を目指す。

情報・生産技術部

機械学習を用いたレーザ溶接における溶け込み深さの予測とブローホール検出モデルの構築

レーザ溶接においては狙った溶け込み深さに対して加工条件の選定に多くの時間を要する.さらに,溶接欠陥の一つであるブローホールは加工条件の検討によりその発生確率を抑えることができるが,突発的に発生することがあるため別工程での検査が必要となる.そこで,レーザ溶接条件検討の省力化に加え,加工時に発生する信号をモニタリングするインプロセスでの検知が求められている.

本研究ではレーザ溶接条件,発光強度と溶融池形成前後の温度からなるモニタリング,各種評価(RT,外観撮影,断面観察)により得られたデータを元に機械学習を行い,溶け込み深さの予測モデルとブローホール検出モデルの構築を行う.

鉱工業の小規模工場のスマート化を実現するための通信アーキテクチャに関する調査

当所では、鉱工業の工場のスマート化を目指し、ロボットの遠隔監視・操作において実績のあるRSi (Robot Service initiative)が策定したRSNP (Robot Service Network Protocol)を用いて、異なるメーカーの多種多様な機器や設備を統合的に遠隔監視・操作するためのシステムを試作した。しかし、試作したシステムではロボットの操作において少なくない応答遅延やカメラ映像の高解像度配信への非対応があり、工場のスマート化を実現する上での課題になると予想される。本研究では、RSNPに限定せずに、工作機械、環境センサー、およびロボットを統合的に遠隔監視・操作を可能にする技術について調査する。国内のスマート工場関連のユースケースから機能と性能要件を抽出し、検討対象とするシステムを確定させ、そのシステムをより包括的に実現する技術を明らかにする。

ラティス構造を用いた柔らかい触感設計における表面の厚みが柔らかさ知覚に与える影響について

近年3Dプリンターは使える素材が増加し用途が広がってきている。なかでも柔らかい素材の造形は多用途に期待がされているものの、出力条件の検討や狙った柔らかさを設計する工数の多さから十分な設計支援が行えていない。本研究では3Dプリンタで造形できる特有の構造であるラティス構造に対して表面に膜を張り厚みを持たせることによって生じる柔らかさ知覚の影響について心理物理実験を行い人が触れた際に心地の良い触感・質感を設計する。

化学技術部

樹脂系材料の劣化に対する化学的総合診断への試み-バイオプラスチックへの適用-

プラスチック部品、塗料など、樹脂系材料の劣化に関する相談は、年間通して数多く寄せられる。適切な評価・診断手法を提案・実施し、原因究明につながる情報を提供することが求められている。一方、単一の分析手法による結果から得られる情報は限られている。このような背景から、種々の化学的手法を組合せて、劣化を総合的に評価、診断する手法について検討し、樹脂系材料の劣化にかかわる試験計測技術の充実をはかることを目的とする。本研究では、低炭素社会の実現に資する環境配慮型材料として、今後さらに利用がすすむと予測されるバイオプラスチックのひとつである、ポリ乳酸を対象として促進暴露試験を行い、各種分析手法による評価、解析を行う。

電解オゾン水に関する基礎研究

オゾンによる殺菌効果を期待した電解オゾン水生成器において、溶存オゾン濃度等が正確に定量できる測定法を検討する。

日本酒の「上立ち香」「含み香」「返り香」の分析方法の検討

「上立ち香」「含み香(口中香)」「返り香」といった飲酒時に感じる香気は従来、人による官能評価で行われていますが、訓練や体調の調整が必要であったり、個人差があります。また香りの有無・強弱は評価できますが、定量性に欠けます。一方、機器分析では酒に含まれる香気成分をまとめて検出するため、上立ち香、含み香(口中香)、返り香のように分けて評価できません。そこで本研究では定量的かつ再現性良く上立ち香などを評価する方法の開発を目指します。各香りを分けて捕集する方法を構築し、官能評価結果との相関が得られることが目標です。

酸素濃淡電池腐食に関する研究

酸素濃淡電池腐食(別名 通気差腐食)とは,溶存酸素(DO)の濃度差が存在する水中に金属が浸っている場合,DO濃度が低い部分の金属の腐食が促進される現象である.この種の腐食の代表例は,pH緩衝性の無い中性環境中において鋼に発生するものである.酸素濃淡電池腐食は銅合金には発生しないとされており,その他の金属素材において発生するかどうかは明確には分かっていない部分も多い.そこで水中にDO濃度差を発生させる実験系を組み立て,鋼およびその他の実用金属材料を用いて,酸素濃淡電池腐食が発生するかどうか,また発生する場合の条件について調べる.得られた結果を将来の腐食トラブルに対応する際の情報源として役立てる.

六価クロム標準試料開発に関する基礎的検討2

表面処理鋼板(三価クロメート処理)中の六価クロム標準物質の試作を行うための基礎的検討。

表面処理鋼板(三価クロメート処理)を作成し、標準物質として重要な六価クロム濃度の管理方法、安定性を検討する。

リン化合物の定量法の確立と有機リン酸の水・有機溶媒間における分配挙動の解明

リン化合物は環境中や生体物質、毒物等に含まれており、重要な分析対象物である。リンの分析法として用いられる誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)やモリブデンブルー吸光光度法は、水溶液中のリン酸イオンを対象とした測定法であり、有機溶媒中や有機リンを測定する場合には酸分解等の前処理が必要となる。そこで本研究では、有機リン化合物を対象として、各分析手法の定量下限値や前処理法の検討を行う。

植物由来成分を原料とした新規機能性樹脂の開発

近年、環境負荷低減に向けた高分子材料開発が盛んに行われている。カーボンニュートラルの観点から、植物由来原料の活用に注目が集まっており、一部実用化も進んでいる。本研究では植物由来成分を原料とした新規機能性樹脂の開発を目的とし、クローブ油から工業的に採取されるオイゲノールを原料として検討する。

シクロデキストリン薄膜のナノ空間を利用した電気化学式センサーの検討

近年、γ-シクロデキストリン(γ-CD)のカリウムイオンへの配位により、多孔質結晶である金属-有機構造体(MOF)、CD-MOFが報告されている。CD-MOFは大きな吸着容量と分子選択性を有することから、高感度分子センサーへの応用が期待できる。しかし、CD-MOFの分子吸着挙動をどのようにセンサーの検出指標へと転用するか十分に検討されていない。そこで本研究は、CD-MOF薄膜を用いたセンサーの検出指標となる電気化学特性を見つけることを目的にする。CD-MOFは、連続的なナノ空間を有するため、空孔サイズ未満のイオンは空間内部を自由に移動できるが、電気的に中性の有機分子が吸着することで、その移動は阻害されると考えられる。そのため、溶液中に浸漬したCD-MOF薄膜の電気化学特性と溶液中の有機分子濃度の相関を検討することで、有用な指標となりうる因子の発見が期待できる。

食品機能性成分の神経保護作用評価方法の構築

近年、平均寿命の延伸、高齢化に伴い認知症をはじめとする神経疾患の発症が増加している。神経疾患発症後の治療は困難であり、完治を目指すよりも進行抑制や症状緩和が主となるため、神経疾患発症前に防ぐことが重要である。その方法の1つとして日常の食品摂取による神経保護があるが、食品の神経保護作用については動物を用いた脳機能を中心として評価されており費用と時間を要する。そのため簡便な食品の神経保護作用評価方法の構築が望まれている。食品機能性成分の神経保護作用について、試験管レベル~生体レベルまで簡便に評価できる方を構築することで、神経保護作用をもつ新たな食品機能性成分の迅速なスクリーニングが可能となる。

ガラス繊維強化プラスチックの破断面観察

製品が破損した際、割れた箇所の形状観察から破損に至る経緯を推察する破面解析が、破損原因究明のための有力な手法とされている。

繊維強化プラスチックはプラスチックにガラスやカーボンなどの繊維を混合した複合材料で、軽量かつ強度や弾性率に優れていることから、構造材料にも用いられるようになっている。一方で、複合材料になるため、破損原因と破断面の形状との相関に係る知見が求められている。

本研究では、ガラス繊維強化プラスチックの破壊メカニズムと破断面形状との対応関係を事例として蓄積し、破損原因対策に係る技術支援に役立てることを目的とする。

非線形粘弾性指標を用いたゲル化点評価の検討

企業支援において接着剤や塗料の硬化条件の最適化や不良の原因究明など様々な相談がある。このような製品では、温度や成分配合を変えた時のゲル化点を厳密に測定することが大変重要である。我々はこれまで非線形粘弾性(NLVE)の研究を行い、ゴムやクリームを大変形させると固体と液体の違いが顕著に表れる解析方法を見出した。本研究では、NLVE指標によるゲル化点の新たな評価方法としての活用を検討する。これまでの研究で構築した解析方法を用いて、線形粘弾性(LVE)による評価法との比較を行う。本研究の成果が実現できれば、プラスチック製品の生産、性能評価、トラブル解析に至るまで様々な分野にわたって活用が可能となる。

プラスチックフィルムの引張試験におけるビデオ伸び計を使用したひずみ測定

プラスチックフィルムの引張試験では非接触式のビデオ伸び計を使用することでひずみ測定が可能になるが、ネック状変形の影響などにより標線を認識できず、ひずみデータを取得できない場合がある。本研究では、ビデオ伸び計を使用して引張試験中の精密なひずみを測定することを目的とし、標線の形状や色などの条件を変えて、最適なひずみの測定方法を検討する。最適なひずみの測定方法を見きわめ、これまでに対応できなかったフィルムの引張弾性率測定などの技術相談・試験計測に活用する。

繊維製品の外観変化評価についてAIを用いた画像処理による判定の可能性の検討

①背景:しわや毛玉の評価は人間が行っているが、判定にばらつきがあったり、判定者の経験などが必要であるが、画像入力機器、画像処理技術、AI技術が発展してきているので、それらを応用し、人と同じような判定に近づけたい。

②目的:人が感じているしわや毛玉の程度を、画像入力方法や画像処理方法、画像から取り出したデータをAI技術により処理方法により、近づけたい。

③実験内容:模擬的なサンプルを作成し、画像入力方法の検討、画像処理方法の検討、データ処理方法とAI技術の選択などを行って、より人の判定と近い方法を検討する。

温度変調DSCによる比熱測定の検討

物質の比熱は基本的な熱的特性の一つであり、測定には主にDSCが用いられている。近年普及が本格化した温度変調DSCは一度の測定で比熱の算出が可能であるが、比熱を精度よく測定するためには印加周波数や温度振幅などの測定パラメータの最適化が必要である。本研究では、主に比熱既知の物質を用いて温度変調DSC測定条件の最適化を行うとともに、基準試料を用いる従来法との比較検討を行い、比熱測定に関する技術的知見を蓄積することを目的とする。

マイクロアレイ型燃料電池を応用した電気化学式水素センサーの開発

世界は2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする,カーボンニュートラルの実現へ向かっている.この目標に対してクリーンで再生可能なエネルギーとして水素を基盤とした社会に向けての取り組みが始まっている.水素社会の構築のためには,その安全性の確保も必須であり,水素の製造・輸送・貯蔵そして使用の各過程で水素の適切な管理のために水素センサーのニーズが高まることが容易に想像できる.KISTECが開発したマイクロアレイ型燃料電池は,直径1 mm以下の微小の燃料電池をワンチップ上に複数配置した小型電池デバイスであるが,これを水素検出に利用することで,小型・低コストで高感度の水素センサーが実現できる可能性がある.本研究では水素に対する感度や応答性を調べセンサーとしての可能性を探る.

川崎技術支援部

ウィズコロナ時代に向けた抗ウイルス製品のスクリーニング法の研究開発

①背景:コロナ禍で、各種抗ウイルス製品の研究開発が盛んにおこなわれている。費用などのハードルが高い効ウイルス性能試験の代替となる評価法が求められている。

②目的:光触媒JIS試験を用いた抗菌抗ウイルス性能スクリーニング試験方法を開発する。

③実験内容:光触媒JIS試験のうち、主にセルフクリーニング性能試験と抗菌抗ウイルス性能試験を同じ試料に対して実施し、相関を確認してデータベースとすることで、セルフクリーニング性能試験を抗ウイルス製品の性能評価法として提案する。

人工光合成材料の性能評価手法の確立

①背景:光触媒について、これまで環境浄化分野の相談・依頼が多かったが、その一方で、人工光合成分野に関する相談が年々増加傾向にある。

②目的:人工光合成分野に関する相談や依頼に対応できる試験体制を構築し、企業、大学等での研究、製品開発の一助となる。

③実験内容:有機性廃棄物の光改質反応による水素生成機能を有するCdS光触媒をターゲットとして、各種試験条件における水素生成および有機物の追跡を行う。

TEMトモグラフィーを用いた三次元観察技術の確立

①材料の微細化に伴い形状が複雑化されることで、TEM分解能レベルでの三次元的な立体形状観察が、近年、注目を集めている。

②TEMの利用頻度拡充を図る。

③TEMトモグラフィーを用いた三次元観察技術の習得。

軽元素材料のイメージング技術の研究

①背景:カーボンや高分子のような軽元素を主成分とする材料は電子顕微鏡やX線顕微鏡観察下ではコントラストが乏しく、金属などと比較すると視認性が低い。内部構造の観察を目的として材料を樹脂包埋した場合、視認性の低下はさらに顕著となり、包埋に用いた樹脂と材料の区別が付かなくなることもある。

②目的:本研究は新規に開発した「視認性を向上させる包埋固定用組成物」を材料研究へ応用することにより、これまでイメージングが困難とされてきたグラファイトなどの軽元素材料について詳細な形態評価を実現させることを目的とする。

③実験内容:グラファイト、高分子などへ開発した組成物を応用してマクロ構造及びミクロ構造を電子顕微鏡により評価する。

高放射照度光源の検討

①背景:新型太陽電池の製品化において、稼働年数を明確にすることが望まれ、その方法の一つして高放射照度の光照射による光加速試験の検討が行われている。                                     ②目的:高放射照度疑似太陽及びLED光源を検討する。この光源を用いて、ペロブスカイト太陽電池の光加速試験を行い、寿命予測の一助とする。

③実験内容:照射距離の検討やレンズを組み合わせ、2sun以上の照射エリア、照度むらを評価する。

ペロブスカイト太陽電池の劣化解析基盤の構築

①背景

カーボンニュートラルに向けた社会情勢を受けて、次世代の太陽電池であるペロブスカイト太陽電池(PSC)が注目されている。しかし、PSCは耐久性に課題があり、水分、酸素、熱などが原因で発電性能の低下を引き起こす。本研究では、PSCデバイスの劣化機構を明らかにし、実用化に貢献する。

②目的

PSCの耐久性、劣化機構を明らかにする。

③実験内容

PSCの耐久性試験を行う。機器分析を行い劣化要因を解明しデバイスの劣化機構を明らかにする。