令和2年度研究概要

光操作に基づく医療技術の創出

体内の医薬品を光で操作する新しい医療技術を開発します。

東京大学大学院 総合文化研究科
教授 佐藤守俊

 医薬品として用いられる分子(化合物、ペプチド1、抗体、酵素など)や細胞、ウィルス等は、いったん生体の中に入ってしまうと、その働きを生体の外からコントロールするのが極めて困難です。このことが、薬効が高く副作用が低い優れた医薬品を開発する上での大きなハードルとなっています。本研究では、乗用車に取り付けられたアクセルやブレーキのように、生体の中に入った医薬品の働きを光で、特に、生体組織の透過性が極めて高い近赤外光2で自由自在に操作するための、一般性・汎用性の高い基盤技術を開発します。これにより、光照射による遺伝子治療やガン治療等の革新的な医療技術の実現を目指します。

新産業創出に向けた無標識AIセルソーター

 

※1 ペプチド : 複数のアミノ酸がつながった(ペプチド結合)状態。より多くのアミノ酸が結合したものをタンパク質という。

※2 近赤外光 : 波長がおよそ0.7~2.5µmの可視領域に近い電磁波。テレビのリモコンや医療機器等に使用されている。

貴金属フリー新規触媒技術の開発

貴金属フリーな物質変換・エネルギー活用技術の開発を目指します。

東京大学  生産技術研究所
准教授 砂田祐輔

触媒は、化学工業における物質合成プロセスや燃料電池等におけるエネルギー活用技術、自動車等の排気ガス分解過程など、現代社会の多くの分野で重要な役割を担っています。従来、触媒としてはパラジウムや白金に代表される貴金属から構成されるものが主に用いられてきましたが、これらの貴金属は希少資源であり高価であるなどの課題があります。本研究では、研究代表者らがこれまでに開発してきた、鉄に代表される普遍金属のみを用いた触媒合成技術を基に、貴金属を用いない新触媒を開発します。開発した触媒を、貴金属フリーな化成品合成やエネルギー活用技術へと展開し、貴金属に依存しない社会の構築に貢献することを目指します。

脳梗塞治療のためのスキャフォールド材料


超高空間分解を実現するナノカーボン光分析装置

新しい光源技術に基づいた高性能分析装置を開発します。

慶應義塾大学 理工学部
准教授 牧英之

カーボンナノチューブ3やグラフェン4を用いた光源は、超小型で超高速な光源をシリコンなどのあらゆるチップ上に集積化できることから、本光源を用いることで、従来の電球や半導体光源では実現できない新たな分析装置を開発することができます。本研究では、ナノカーボン材料のナノ構造に注目し、従来の光分析での空間分解能の壁を打ち破る、全く新しい高空間分解能の光分析装置を開発します。このような全く新しい高分解能の光分析装置を実現することにより、従来の光分析装置では困難であった微小領域の分析や高分解能のイメージング装置を開発することが可能となることから、化学、物理、材料、バイオ領域といった幅広い分野で利用可能な新しい光分析技術を構築します。

3 カーボンナノチューブ : 炭素原子が網目状に結合し円筒状構造となったもの。

4 グラフェン:炭素原子が網目状に結合してシート状構造となったもの。

 セキュア量子基盤技術の研究