令和3年度研究概要

光技術を用いた超広帯域テラヘルツオシロスコープの開発

テラヘルツ領域のリアルタイム計測が可能なオシロスコープの開発を目指します。

横浜国立大学大学院 工学研究院 
教授 片山郁文

 テラヘルツ(THz)領域は、1秒間に1012回(1兆回)振動する電磁波を指しており、次世代のデバイス開発や、イメージング応用などで注目を集めている周波数領域です。しかし、この領域の電磁場を検出することは難しいことに加え、その波形をリアルタイムで検出できるデバイスはこれまでに実現しておらず、テラヘルツ領域の利用を妨げる一因の一つになっています。そこで本研究では、超短パルスレーザーやファイバーなどの光技術を活用することによって、テラヘルツ領域の電場波形を簡便、かつ高速に検出する技術を開発し、従来技術では到達できない広帯域のテラヘルツオシロスコープを実現します。また、本技術によって、テラヘルツ技術の応用範囲が広がり、産業の振興に貢献することを目指します。

ゲノム構築技術による創薬研究基盤の開発

疾患モデルiPS細胞創出技術と、新型コロナウイルス感染症に対する創薬基盤技術を開発します。

東京工業大学  生命理工学院
准教授 相澤康則

 本研究では、2020年ノーベル化学賞に輝いたクリスパー・キャス9技術*1を基盤に、その一歩先をいく最先端ゲノム工学技術「ゲノム構築技術」を駆使し、革新的な創薬研究基盤を神奈川県に構築します。ゲノム構築技術によって、様々な生物種のゲノムの好きな部位を、クリスパー・キャス9技術単独では不可能なほど大規模に好きなゲノム配列へと改変できるため、創薬研究に活用できる新しいタイプの人工細胞や人工ウイルスの創出が可能となります。本グループが培ってきたゲノム構築技術を用い、様々な疾患に特有のゲノム変異をもつiPS細胞を創出し、発症機構の解明、治療薬の探索、治療技術の開発を可能とする技術基盤の開発を進めるとともに、新型コロナウイルスに対する創薬基盤の確立も目指します。

  • ※1 クリスパー・キャス9技術(CRISPR-Cas9):生物の遺伝子配列情報が全て書き込まれているゲノムDNAの任意の配列部位だけを改変する技術。安全に改変できる部位の数は限られるなど技術的制限をもつ。

化学ボロフェンによるフレキシブル素子の開発

新しい二次元電子素子の開発を目指します。

東京工業大学 化学生命科学研究所
助教 神戸徹也

 グラフェンに代表される単原子層物質は特殊な電子物性や物理特性から、次世代の電子デバイスへの応用が期待されてきました。なかでもホウ素からなるボロフェンは、高いフレキシビリティと高強度性からポストグラフェン材料として注目を集めています。しかしながら、これまでに報告されていたボロフェンは安定性が極めて低く実用化は不可能と考えられてきました。本研究ではボロフェン骨格を持つ安定なホウ素原子層シートを化学原料から液相で合成できる「化学ボロフェン」を開拓します。この化学ボロフェンの安価で簡便な合成手法を確立し、化学修飾や元素置換により機能化を推し進めることで、既存材料では発現できない新しい二次元素子材料の開拓を目指します。