熱過渡解析によるパワーデバイスの放熱特性評価

熱過渡解析の特徴

パワーモジュールや高輝度LEDなど発熱を伴うデバイスは、その性能を十分発揮するためには冷却性能が重要となっています。
熱過渡解析によって得られる構造関数を用いることにより、デバイスの放熱特性や、放熱経路の欠陥を調べることができます(図1)。

これは例えば図1のようなパワーモジュールの構造における発熱と冷却の系を考えた場合、この系の熱の流れを図2のように一次元の熱回路に置き換えて考えます。

これは熱の流れを電気の流れのアナロジーとして、たとえば、温度は電圧に、熱流束は電流に、熱抵抗は電気抵抗に、熱容量は電気容量に、といったように置き換えるわけです。

この熱回路の熱抵抗・熱容量の値を熱的な過渡応答解析によって求めるのが熱過渡解析です。

パワーモジュールの実装構造
図1 パワーモジュールの実装構造

構造関数の曲線を見ると曲線の傾きが大きい部分は相対的に熱抵抗の値が小さい実装構造に対応しており、傾きが小さい部分は相対的に熱抵抗の値が大きい実装構造に対応しています。

つまりこの構造関数を見れば実装構造の熱の流れについて熱的な性質を可視化できるので、たとえば、信頼性試験後に熱抵抗上昇が見られた場合、実装構造のどの部分で熱抵抗が上昇しているのかわかります。

図2 構造関数と熱回路
図2 構造関数と熱回路

パワーサイクル試験の前後での熱過渡解析結果

図3はパワーサイクル試験の前後で熱過渡解析を行って、構造関数を測定した結果です。

グラフの点線は実装構造から概算した、ダイボンディング部までの累積熱容量を示しており、この部分から曲線が分離していることからパワーサイクル試験によってダイボンディング部が劣化していることが定性的にわかります。

図の右側にパワーサイクル試験前後のダイボンディング部のSAT像を示していますが、これを見ると実際にダイボンディング部が劣化して画像が変化していることがわかります。

パワーサイクル試験前後の構造関数の変化
図3 パワーサイクル試験前後の構造関数の変化

※パワーサイクル試験
パワーサイクル試験はパワーモジュールに周期的に通電を行うことによって、電気的・熱的ストレスに対する耐久性を評価する試験です。
パワーデバイスの信頼性試験では、パワーサイクル試験が重要な試験項目の一つとして位置づけられています。

※SAT(Scanning Acoustic Tomography:超音波映像装置)

熱抵抗測定システムの仕様
表1 熱抵抗測定システムの仕様

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E0767熱抵抗測定1時間当たり 9,350円
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