OHラジカル量の測定

川崎技術支援部
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光触媒反応で生成する化学種の蛍光強度から反応に寄与したOHラジカルの量を測定することができます。

原理

光触媒により生成したOHラジカルは水溶液中のテレフタル酸と反応して、2-ヒドロキシテレフタル酸を生成します。 2-ヒドロキシテレフタル酸は紫外線を照射すると青色の蛍光を発することが知られています。この試験では、 生成した2-ヒドロキシテレフタル酸の蛍光強度を観測することで反応に寄与したOHラジカル量を測定します。

蛍光強度の観測には図1のようなプローブを用います。プローブには光照射用のファイバーと反射光測定用のファイバーが組みこまれており、光照射と蛍光強度の測定を同時に行うことができます。

OHラジカルとテレフタル酸の反応
蛍光プローブ法の概要

図1. 蛍光プローブ法によるOHラジカル測定の概要

試料

市販のTiO2スラリーを用いてガラス基板上にスピンコートでTiO2薄膜を作製しました。スピンコートの回転数とスラリー濃度を変化させることで、膜厚の異なる6種類のTiO2薄膜試料を作製しました(図2)。

(写真)作製したTiO2薄膜試料の断面画像

図2. 作製したTiO2薄膜試料の断面画像(集束イオンビームで断面を作製し、電子顕微鏡で観察)

OHラジカル量の測定

  1. テレフタル酸二ナトリウム水溶液(5 mM, 20 mL)とTiO2薄膜試料をφ60 mmのシャーレに設置。
  2. 図1のように上部からブラックライトを1時間照射(試料表面で1.0 mW/cm2)。
  3. 反応後の水溶液を採取し、図1装置(蛍光プローブ法)で蛍光強度を測定。
  4. 濃度が既知である2-ヒドロキシテレフタル酸の標準水溶液の蛍光強度を測定することで検量線を作製。3の蛍光強度から反応に寄与したOHラジカル量を算出。
OHラジカル量の測定結果のグラフ

図3. OHラジカル量の測定結果

作製したTiO2薄膜試料はそれぞれ異なる蛍光強度を示しました。スピンコートの回転数の減少とスラリー濃度の増加に伴い、蛍光強度は強くなる傾向がみられました(図3(a))。また、TiO2薄膜試料の膜厚とOHラジカル量の間には正の相関が確認されました(図3(b))。これは、OHラジカルを生成するTiO2の表面積が増加したことに起因すると考えられます。

ガス分解性能との相関性

同じTiO2薄膜試料を用いて、JIS R1757/ISO 19652に準じたアセトアルデヒド分解性能試験(図4(a))を実施しました。

アセトアルデヒド分解性能試験とOHラジカル量測定の相関(試験の写真とグラフ)

図4. アセトアルデヒド分解性能試験の概要と両試験結果の相関

アセトアルデヒドの分解速度定数と生成したOHラジカル量の間には正の相関が確認されました(図4(b))。蛍光プローブ法によるOHラジカル測定は、アセトアルデヒドなどのガス分解性能試験の簡易的な代替評価法として有効であるといえます。

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料金

NO. 項目 単位 料金
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[Scios LoVacシステム] 追加
追加1時間当たり 30,470円
K120470-01 マルチ解析用FIBオプション 
カーボン膜デポジション
10分当たり 2,420円
K120473-01 マルチ解析用FIB付属のSEM観察 1試料1視野観察につき 20,900円
OHラジカル量を測定する試験やアセトアルデヒド分解性能試験は上記料金表の「その他光触媒性能試験」が工数に応じて積算されます。
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