2026年5月7日
ナノスケールで「熱の通り道」を可視化。走査型熱顕微鏡(SThM)によるCFRPの熱伝導率マッピング
【計測事例:CFRP断面の熱伝導コントラスト像】
図1は、エポキシ樹脂中に埋め込まれたカーボンファイバー(炭素繊維)を輪切りに断面出しした試料について、SThMのアクティブモードを用いて局所的な熱伝導率の違いをマッピングした走査型熱顕微鏡像です。 SThMでは、ナノレベルに先端を鋭利化した微小な熱センサー(プローブ)で試料表面をなぞることで、物理的な凹凸だけでなく「局所的な熱の逃げやすさ」を画像化します。画像において、非常に高い熱伝導率を持つカーボンファイバー領域は、断熱性の高いエポキシ樹脂領域に対して明確に異なるコントラストとして描出されています。これにより、繊維と樹脂の境界における熱の不連続性を直接視覚化することが可能です。
【背景と課題】
電子機器の極小化や、EV(電気自動車)向けパワー半導体の高出力化に伴い、製品の放熱設計・サーマルマネジメントは性能と寿命を左右する最重要課題となっています。しかし、従来の熱分析手法(DSCや熱拡散率測定など)では材料全体の平均的な熱物性値しか得られず、「なぜ局所的に熱がこもるのか」「複合材料のどこが熱伝導のボトルネックになっているのか」を特定することは困難でした。
【想定される技術支援・活用シーン】
顕微鏡の見た目だけでは判別できない材質の違いや、熱的な分散ネットワークの形成状態を評価することが可能です。
● 放熱シート・TIM材の開発: 樹脂中の放熱フィラー(アルミナ、窒化ホウ素など)の分散状態や、熱伝導パスの形成確認。
● 複合材料(CFRP/FRP)の界面評価: 繊維とマトリックス樹脂の界面における密着性や熱劣化・熱抵抗の局所的評価。
● 半導体・電子部品の不良解析: 微細な配線パターンにおける局所的なホットスポットの検出や、ナノスケールの欠陥領域の熱特性解析。
「設計通りの放熱性能が発揮されない」「フィラーの分散度合いを熱的な視点から定量評価したい」といった実践的な課題をお持ちの方は、ぜひKISTECの技術支援(試験計測・技術開発受託)をご活用ください。

(a)形状像:試料表面の物理的な凹凸を示すトポグラフィ像。(b)SThM像(熱伝導度コントラスト像):プローブからの熱の逃げやすさを電圧の変動としてマッピングした像。高熱伝導率のカーボンファイバー部(黄色〜オレンジ色領域)と、断熱性の高いエポキシ樹脂部(青〜紫色領域)の境界における熱特性の差が、ナノメートルオーダーの高い空間分解能で明確に可視化されています 。

本装置は、公益財団法人JKAによる補助により導入しました。
使用機器
ご利用方法
依頼試験(KISTEC事業名:試験計測)、委託受託(KISTEC事業名:技術開発受託)で利用できます。