機械・材料技術部研究テーマ(令和5年度)

機械・材料技術部
海老名
  • 強度試験
  • 摩擦摩耗
  • 粉体・表面性能
  • 金属材料
  • セラミックス・無機酸化物
  • 粒・粉体
  • #粉末
  • #トライボ
  • #人工オパール
  • #ひずみ

当所の研究職員が技術相談、依頼試験及び委託開発等の中小企業に対する支援を効果的に行うために技術資産の蓄積を目的として、令和5年度に取り組んだ研究テーマをアーカイブとしてご紹介します。

計算材料科学の活用に向けたPCクラスタの構築

2050年の達成を目指すカーボンニュートラルや内閣府が提唱するSociety5.0の実現に向けて、革新的な特性を有する材料の開発が益々重要になっている。近年、スーパーコンピューターによる計算材料科学を駆使した革新的材料研究が一部の大学や国研を中心に推進されているものの、設備投資や維持運営に係るコストが大きく導入の障壁が高いのが実情である。公設試であるKISTECも例外ではなく、小~中規模計算可能な計算設備も有していないのが現状である。そこで、計算材料科学がより広く普及する未来を見据えて、低コストな計算環境の構築・及び運用方法の確立のために、スモールスタートする際に有効であるPCクラスタの構築を行う。

アルコール系液体潤滑下における各種硬質薄膜の摩擦摩耗特性評価

コンプレッサーや食品用機械はもとより,EV・HV等の次世代型輸送機械の潤滑油においても,SDGsの観点より環境性能の向上が求められることから,生物由来で産生可能なアルコール系液体の需要が高まっている.本研究では生分解性の高い糖アルコール系液体潤滑下における各種硬質薄膜の摩擦摩耗特性を幅広く蓄積することを目的とする.昨年度は,糖アルコール水溶液を用いたDLC膜の摩擦摩耗特性について,炭素数が小さい糖アルコールの30%水溶液で良好な結果となることを明らかにした.実使用を目指すにあたり,良好な結果を得た組合せについて圧力速度(PV)特性評価を実施する.また接触角の変化,潤滑剤のレオロジー特性評価等により低摩擦摩耗となる要因を解析する.

湿式成形中の粒子集合構造形成過程のリアルタイム観察

微粒子を分散させたスラリーを乾燥させて成形体を得る湿式成形は制御因子が多く、互いに複雑に相関するため、科学的な体系化は未達である。これまでにOCT観察を基軸にした評価システムを構築し、スラリーの乾燥特性と粒子集合構造の変化の相関を得ることには成功したものの、構造変化は定性的な理解に留まっていた。本研究では、乾燥過程におけるスラリー中の粒子集合構造変化を定量的に理解することを目的とする。

ナノ・マクロ領域への接続を目指したマイクロカンチレバー試験のスケール拡張

マイクロカンチレバー試験は、多結晶材料の粒子や粒界スケール(メソスケール)の引張応力下の破壊特性を直接評価でき、近年はナノ、マクロの力学特性との接続の観点から、試験片のスケールを拡張した試験プロセスの確立が期待されている。本研究では、マイクロカンチレバー試験において、片持ち梁状試験片のサイズが、変形挙動や、梁理論で算出される曲げ強度に与える影響(スケール効果)を明らかにする。

Phase Field法による多結晶マルテンサイト変態の組織形成シミュレーション

近年、計算機性能の向上によりPhase Field法やCALPHAD法などの“計算材料科学”を活用した金属組織の予測が可能となってきている。計算材料科学を活用した材料開発の効率化は今後さらに活発になることが予想されるが、未だ一部の大企業や大学などに活用が限定されているのが現状である。Phase Field法は材料組織形成過程を定性的に予測・可視化するために非常に強力な手法であり、活用することができれば材料開発・評価の効率化に寄与することが期待される。そこで本研究では、現在我々が実験による研究対象としている材料に対してPhase Field法を適用することで研究を推進するとともに、Phase Field法をKISTEC内で利用する際の課題を明らかにし活用方法を模索することを目的として研究を行う。

燃焼合成Ca-α-SiAlON粉末の焼結におけるAlNの添加効果

SiAlONは反応焼結法で作製する方法が一般的であり、α-Si3N4、AlN、Y2O3、Al2O3を原料粉末として用いるため、所望の特性を有するSiAlON焼結体を得るためにはそれぞれの添加量や焼結条件などの検討が必要となる。一方で燃焼合成法はSiとAlを窒素雰囲気中で燃焼しα-SiAlON粉末やβ-SiAlON粉末を得ることが出来る。これらの燃焼合成SiAlON粉末を原料として焼結体を作製することで材料設計が比較的簡易となる。本研究では燃焼合成法で作製したCa-α-SiAlON粉末へ焼結助剤として異なる量のAlNを添加し、ホットプレス法で焼結を行う。燃焼合成Ca-α-SiAlON焼結体の構成相及び機械的性質を評価することで、焼結条件と機械的性質の関係を調べる。

デジタル画像相関法によるひずみ分布測定技術の開発

現在、ひずみ測定ではひずみゲージを用いる手法が一般的であるが、一つのゲージから得られるひずみ値は一点一方向のみであり、多点や多方向の情報を得るためには、多くのひずみゲージを測定物に設置する必要があり、時間やコストが課題となる。デジタル画像相関法(DIC)は測定に際し計測物の画像の撮影のみと非接触で全視野的な計測が可能である。本研究ではひずみ測定の新たな手法の提案を目指し所内DIC技術開発を目的とした。

異なる粒度分布計測法の相互比較

KISTECでは、粒度分布評価におけるお客様の多様なニーズに応えるべく、走査電子顕微鏡に加えて、2008年度に動的光散乱式装置、2018年度に光顕による粒子画像解析装置、2022年度末にレーザ回折式装置を導入して、測定メニューの拡充によるワンストップ対応を目指している。そこで、各種計測手法で得られる結果を系統的に比較検討して、お客様に分かりやすく紹介するデータの収集を行う。

液体浸透時の人工オパール構造色の変化に関する研究

人工オパールは、粒径が数百ナノメートルに揃った球状粒子を合成し、密に充填して作製することができる。粒子の規則的な配列からなる周期構造が光に作用することにより、構造色を発現する。KISTECでは、陶芸への利用を中心に人工オパールの研究をしてきた。人工オパールが陶器表面に露出した状態で液体を浸透させると、色が変わったり消えたりし、乾くと元の色に戻る。本研究では、液体浸透時の構造色変化の要因を明らかにして制御可能にする。