試作用ナノインプリント用金型についての検討

●研究期間:令和2年4月〜令和4年3月
●実施場所:海老名本部
●研究担当:電子技術部 電子材料グループ

研究概要

 写真撮影で生じるゴーストやフレアを抑制する無反射構造体、表面に形成した周期的なナノ構造(ナノ周期構造)による構造色など表面にナノ構造体を形成することにより、光学的な機能や親水性、疎水性などを表面に付与できます。また、ナノ周期構造により、疎水性を示す材料表面を親水性へ、親水性を示す材料表面を疎水性へ表面の特性を変えることが可能です。更に、絶縁材料の表面に金属製ナノ周期構造を形成することで、局在表面プラズモン共鳴と呼ばれる微弱な光の強度を著しく増幅させる現象が起こります。この現象は、バイオセンサなどに利用されています。

研究成果と今後の取り組み

 これらのキーワードとなるナノ周期構造を簡単に形成する技術として、ハンコのように金型上の微細な形状を樹脂などの粘弾性体に転写するナノインプリント技術が注目されています。しかし、ナノインプリント技術に用いる金型の製造には、製造コストがかかる半導体技術を多く使用するため、金型作製の工程数を削減する必要があります。ナノインプリントを用いた製造試作ラインの構築ではいかに金型の作製費用を抑えることが重要な課題となっています。
 本研究では、シリコンを含有する樹脂に電子線リソグラフィを行い、金型上にナノ周期構造部分を形成し、金型の製造コストを下げることを目指しました。そして、シリコンを含有する樹脂の一種である水素シルセスキオキサン(Hydrogen SilsesquioxaneHSQ)に弊所電子線描画装置(ELS-S50)を用いて電子線描画を行い、金型を試作しました。その結果、令和2年度に用いた籠型構造のHSQ は垂直壁を形成できましたが、令和3年度に用いた梯子型構造のHSQでは、写真に示すように半球状になりやすいことが分かりました。なお、試作した金型を用いて、熱可塑性樹脂であるシクロオレフィンポリマー(Cyclo Olefin PolymerCOP)にナノインプリントを行った結果、ナノパターン転写が可能なことを確認しました。本研究成果の一部は今年2月発行の技術情報誌である“型技術”に掲載されましたa)
 今後は、ナノインプリント技術を用いた製品開発などの技術支援に取り組む予定です。

使用した電子線描画装置(ELS-S50)

金型上のHSQパターンと転写した樹脂パターン

参考文献 a) 安井学、黒内正仁、金子智、三橋雅彦、HSQを用いた試作用ナノ金型の検討、型技術、第37巻、2号、68-71ページ(20222月発行)