マイクロカンチレバー法による水熱処理したジルコニアセラミックスの劣化評価

●研究期間:令和3年4月〜令和4年3月
●実施場所:海老名本部
●研究担当:機械・材料技術部 材料物性グループ、川崎技術支援部 微細構造解析グループ

研究概要

 3 mol%-Y2O3安定化正方晶ZrO2セラミックス(Y-TZP)は優れた機械的特性を有するため、光ファイバー端子や精密部品、歯科臨床応用などに広く実用化されています。しかし、100℃以上の熱水や高温の水蒸気に曝されると、表面近傍で正方晶から単斜晶への相転移が起こり、機械的特性が著しく低下する水熱劣化(Low Temperature Degradation: LTD)が起こることが知られています。LTDは表面近傍で起きる現象であるため、従来のマクロな強度試験方法では、その影響を直接的に評価することはできませんでした。本研究では、表面近傍におけるメソスケール(サブμm~数十μm)の機械的特性を「直接」かつ「ピンポイント」で測定可能なマイクロカンチレバー試験を用いて、LTDが機械的特性に及ぼす影響を精緻に評価することを目的としています。

研究成果と今後の取り組み

 図は、1500℃で焼成して作製した試料と、これを水熱処理(HT)した試料それぞれの表面にマイクロカンチレバー(微小な片持ち梁状)試験片(幅1μm、長さ12μm、高さ)を作製し、ナノインデンテーション装置で曲げ試験を実施して取得した荷重変位曲線です。未処理の試験片は、変位の増加とともに荷重が線形に増加した後、非線形に変形して破壊する挙動を示す一方、水熱処理した試験片は、変位の増加とともに荷重が線形に増加する過程で破壊に至っており、強度が大幅に低下(本試料の場合、約62%まで低下)することが明らかになりました。また、破面形態の違いから、HTによりY-TZPの粒界強度が低下することを示唆する結果が得られました。今後は、結晶方位を特定した単一の粒子や粒界にフォーカスした試験を実施し、LTD初期に起こる現象の解明を進めていきます。

図 荷重変位曲線の比較