「腸内環境デザイングループ」

 本グループは、様々な疾患との関連が示唆されている腸内細菌叢を含む腸内環境を適切に制御することにより、腸内環境のバランスの悪化が起因となる疾患の予防や治療につながる腸内環境制御システムの基盤構築を目的としています。

グループリーダー


福田 真嗣
慶応義塾大学 特任教授

研究体制

期 間

(有望シーズ展開事業)

2017年4月~2021年3月

(実用化実証事業)

2021年4月~

構成

  • グループリーダー
  • サブリーダー
  • 常勤研究員
  • 非常勤研究員

    実施場所

    川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)4階
    神奈川県川崎市川崎区殿町3-25-13

     

    研究報告(研究概要)

     

    研究課題評価

    (有望シーズ展開事業)

     

    TOPICS

    2021.7.15【論文発表】New
    福田真嗣GLらの研究成果が、「
    Microbiology Resource」に掲載されました。
    Complete genome sequence of Atopobiaceae bacterium strain P1, isolated from mouse feces
    15 July 2021Announcements 10(28) DOI:10.1128/MRA.00627-21





    研究概要

     腸内細菌叢を含む腸内環境全体の乱れが、腸管関連疾患のみならず、 糖尿病などの生活習慣病やアレルギーなどの全身性疾患にも繋がることが報告されています。本グループでは、腸内環境の変化を宿主腸内細菌叢間相互作用の詳細を明らかにする事で、腸内環境の適切な制御に基づく疾患の予防・治療法の確立を目指します。

    研究内容

    1. 嫌気性チャンバーを用いて腸内細菌基準株の安定的な培養方法を確立し、難培養性腸内細菌の培養にも取り組んでいます。

     多くの腸内細菌の培養が難しい理由として考えられる 一つの要因は、腸内細菌同士の共生関係がお互い、もしくは 片方の生存に必須となる場合が想定されます。腸内細菌叢を 構成する個々の腸内細菌同士は生存競争を繰り広げる一方で、互いに助け合い共生する細菌も存在していると考えられています。すなわち、ある腸内細菌が産生する代謝物質が他の腸内細菌の増殖に重要である可能性があります。このような状況を擬似的に再現するために、二槽式透析培養器を用いた腸内細菌の培養を実施しています。本培養装置器は細菌を通さずに特定の成分のみを通す特殊な膜を中央部に配置しており、腸内細菌叢を含む培地で産生された代謝物質などの成分が膜を通して反対側に供給される仕組みとなっています。

     

    難培養性腸内細菌を含む腸内細菌の単離・培養方法
    ヒトの便からの腸内細菌の単離方法(左図)および難培養性腸内細菌のための新規腸内細菌培養装置(右図)

     

     

    2. 独自の抗体作製方法により、高い特異性を持つ抗体の作製を行い、標的細菌を効率よく単離するためのツール開発に取り組んでいます。

     多種多様の腸内細菌から構成される腸内細菌叢から標的となる細菌を単離するには、選択培地や特定の基質を添加した培地による培養を経る必要があります。そこでより効率良く標的細菌のみを単離・濃縮する方法を検討するツールとして、抗体に着目しました。
     腸内細菌を認識する抗体の作製は過去にも報告はありますが、その特異性は低く、分類学的に類似の腸内細菌も認識してしまうという課題がありました。そこで本プロジェクトでは、標的抗原に対する特異性の高い抗体の作製手法を用いて、特定の腸内細菌を標的とする抗体の作製を試み、グラム陽性腸内細菌の一つを標的とする抗体作製を行いました。
     本抗体を用いることで標的細菌を含む複数の腸内細菌基準株を混合した腸内細菌混合溶液から、効率よく標的細菌を単離・濃縮する手法の構築に成功しています。
     引き続き、有用な腸内細菌に対する抗体作成に取り組んでまいります。

    Magnetic-activatid cell sorting前後におけるそれぞれの試料のフローサイトメトリー
    の結果(左図)、細菌検出用プライマーおよび細菌B検出用プライマーを
    用いた定量の結果(右図)

     

     

    3. 腸内細菌が生体に及ぼす影響の評価を行っています。

     安定培養に成功した腸内細菌基準株の中から選抜した腸内細菌をマウスに投与し、免疫系に与える影響を評価しています。
     あるグラム陰性常在腸内細菌の一つを投与するとマウスの生存には影響しないものの、脾臓が肥大し、炎症に対する免疫応答が強く惹起されることを見出しています。常在腸内細菌の免疫感作により、このような強い炎症反応が誘導される報告はほとんどなく、本所見は新しい知見であると考えられます。さらに炎症の応答を惹起する成分の特定を検討した結果、このグラム陰性常在腸内細菌細胞膜成分が炎症の引き金となり、造血幹細胞および多能性前駆細胞が脾臓に移行し、免疫細胞を増加する可能性が示唆されました。なお菌の定着のみでは脾臓における炎症を惹起しないことも明らかにしました。

     

    腸内細菌腹腔内投与後の脾臓重量および、免疫細胞の細胞数

     

    【お問合せ】
    研究開発部 研究支援課 地域イノベーション推進グループ
    TEL:044-819-2031 / FAX:044-819-2026
    E-Mail : rep-kenkyu☆kistec.jp (☆を@にご変更ください)