次世代合成生物基盤プロジェクト

最先端ゲノム工学技術「ゲノム構築技術」を駆使し、革新的な創薬研究基盤を神奈川県に構築します。本プロジェクトのゲノム構築技術では、様々な生物種のゲノムの好きな部位を、従来のゲノム編集技術では不可能な大規模で任意のゲノム配列へと改変することが可能です。本技術により、様々な疾患に特有のゲノム変異をもつiPS細胞を創出し、発症機構の解明、治療薬の探索、治療技術の開発を可能とする技術基盤の開発を進めます。

期間

  • (戦略的研究シーズ育成事業)「ゲノム構築技術による創薬研究基盤の開発」 2021年4月~2023年3月
  • (有望シーズ展開事業)「次世代合成生物基盤」プロジェクト 2023年4月~

実施場所

川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)   神奈川県川崎市川崎区殿町

研究概要

 ゲノムとは、細胞のはたらきを定めている仕様書のようなもので、コンピューターを動かす際のソフトウェアによく例えられています。そのためゲノムを自由自在に書き換えることができれば、世の中に役に立つ様々な細胞を人工的に作り出すことが可能になります。このゲノム技術による細胞工学革新は、化石燃料依存的な20世紀型産業を、地球環境に優しい21世紀型へ転換する基盤技術になると世界的に注目されています。
 我々の研究室では、この技術革命を創薬分野にも波及させるべく、ヒト細胞内で広範囲のゲノム領域のDNA配列を正確にかつ効率よく改変する技術を開発しています。これを我々は、ゲノム構築技術と呼んでいます。これは、ゲノム全体を俯瞰し、細胞に特定の機能を持たせるようにゲノム配列を設計したのち、その設計通りにゲノム領域を大規模に改変する技術です。その中心的技術の一つがUniversal Knock-in System(UKiS法;右図)です。
 本プロジェクトではゲノム構築技術によって、戦略的研究シーズ育成事業での成果を土台に、薬や治療法の開発に資する新しいヒト細胞ライブラリーの開発や、ウイルスゲノム合成系の開発を行っています。また、ロボットアームを搭載した細胞機能自動評価システムも導入し、開発したヒト細胞やウイルスゲノムの機能を高速で評価できる実験系も構築します。これら成果をもとに、世界が注目する創薬支援拠点を神奈川県に創ることを目指しています。

UKiS法の概要。2段階の相同組換えにより、狙ったゲノム領域の両アリルを好きな配列に置換が可能。

研究内容

1) 癌モデルiPS細胞ライブラリーの開発とその応用

 癌は依然として日本人の死因第一位であり、健康寿命を最も脅かす疾患である。近年、癌摘出臓器に対するゲノム配列解析が大規模に実施され、癌化を誘発している可能性の高い約300種類の遺伝子(癌ドライバー遺伝子候補)が同定されています。これら癌ドライバー遺伝子上での複数の変異が蓄積することで腫瘍細胞が生まれ、さらなる変異蓄積で癌化が進行すると考えられています。そこで我々は、どのような遺伝子変異の組み合わせが癌化に大きく寄与するのかを体系的に理解するための研究を進めています。本研究ではゲノム構築技術を駆使し、正常ヒト細胞のゲノム上に、癌ドライバー遺伝子変異候補を1つずつ、2つずつ・・と導入し、変異の相乗効果を解析します。合計で数千種類の変異の組み合わせをもつヒト細胞株のコレクションを構築する予定です。またこれら細胞の表現型分析は、数十枚のマルチプレートを同時並行で解析できる自動装置によって実施します。このように、癌ドライバー遺伝子と細胞ガン化の因果関係に関するビックデータを常時創出できるハードとソフトの研究資源が整った環境を構築し、ヒト細胞内遺伝子ネットワークのさらなる理解と、その創薬応用を推進します。

2) 神経変性疾患モデルiPS細胞の活用

 癌は依然として日本人の死因第一位であり、健康寿命を最も脅かす疾患である。近年、癌摘出臓器に対するゲノム配列解析が大規模に実施され、癌化を誘発している可能性の高い約300種類の遺伝子(癌ドライバー遺伝子候補)が同定されています。これら癌ドライバー遺伝子上での複数の変異が蓄積することで腫瘍細胞が生まれ、さらなる変異蓄積で癌化が進行すると考えられています。そこで我々は、どのような遺伝子変異の組み合わせが癌化に大きく寄与するのかを体系的に理解するための研究を進めています。本研究ではゲノム構築技術を駆使し、正常ヒト細胞のゲノム上に、癌ドライバー遺伝子変異候補を1つずつ、2つずつ・・と導入し、変異の相乗効果を解析します。合計で数千種類の変異の組み合わせをもつヒト細胞株のコレクションを構築する予定です。またこれら細胞の表現型分析は、数十枚のマルチプレートを同時並行で解析できる自動装置によって実施します。このように、癌ドライバー遺伝子と細胞ガン化の因果関係に関するビックデータを常時創出できるハードとソフトの研究資源が整った環境を構築し、ヒト細胞内遺伝子ネットワークのさらなる理解と、その創薬応用を推進します。


3) 感染性ウイルスゲノムの人工合成系の開発

 本研究項目では、戦略的研究シーズ育成事業で開発した感染性ウイルスゲノム合成技術をさらに発展させ、複数種類のウイルスゲノムの合成を試みています。研究対象のウイルスのゲノム配列は同定されているものの、ウイルス粒子を大量生産することができないケースや、ウイルス粒子が入手困難なために感染プロセスの解明が進んでいないケースが多いのが現状です。そこで我々のゲノム構築技術を駆使してゲノム配列をもとにウイルスゲノムを人工的に合成し、上記の課題を克服することを目指しています。

研究員一覧 (氏名 /職制/ 専門分野/ 本務所属機関)

  • 相澤 康則 /プロジェクトリーダー / 東京工業大学
  • 倉澤 光 / 常勤準研究員