放射光X線で探る負熱膨張材料の電子状態と局所構造変化|KISTEC NEWS online #12

研究開発部 実用化実証事業 次世代半導体用エコマテリアルグループ 
研究員 西久保 匠

研究概要

半導体製造などわずかな位置決めのずれが致命的となるような分野や、航空宇宙分野など温度幅の広い環境下で用いられる材料では、材料の熱膨張による変位や、異種材料接合界面の剥離が大きな問題となります。熱すると収縮するという特性を持つ負熱膨張物質は、構造材料に混合することで熱膨張を抑制することができるため、熱膨張抑制技術として期待されています。本研究では圧力下で不連続な巨大体積減少が起こる物質群に着目して負熱膨張化を行い、大型放射光施設SPring-8の放射光を活用して詳細な結晶構造・電子状態・ドメイン変化といった多角的な視点から、そのメカニズムの解明から更なる新物質のデザインまで行いました。

KISTEC NEWS online #12|vol.30(2024年12月発行) 特集

研究内容・成果

この研究は、放射光を駆使してミクロな結晶構造・局所構造・電子状態からマクロスケールのドメイン構造まで多角的な視点から負熱膨張物性の評価とメカニズムの解明を行い、それらの結果に基づく物質デザインが有効であることを示したものです。今後は実用に向けた材料のドメイン構造変化と負熱膨張特性の相関を解き明かすとともに、今後さらに進化していく放射光を活用して物質の探索と物性・構造の解明を行っていき、物質科学から新たなイノベーションを創生したいと考えています。以下では研究内容を詳しく紹介します。
電荷移動相転移により圧力下で3%もの体積収縮を示すBiNiO3と、圧力下で1%の体積収縮を示す強誘電体BiFeO3との固溶体を合成し、放射光X線回折と放射光X線全散乱データから得た原子二対相関関数(PDF)解析、さらには硬X線光電子分光を行うことで、2つのメカニズムで負熱膨張が増強されることを解明し、新しい材料設計指針を提案しました。
また、強誘電相から常誘電相への相転移による負熱膨張に着目し、一軸加圧による強弾性ドメインの大きな変化を、放射光X線回折により明らかにしました。さらには世界最大の体積変化量を持つ負熱膨張物質のデザインと、ブラッグコヒーレントX線回折イメージングと透過走査電子顕微鏡によるドメイン観察に成功しました。また、高圧下X線回折実験から求めた圧縮曲線から、相転移により引き起こされる負熱膨張の2相共存状態がドメイン境界に働く応力により安定化されることを明らかにしました。


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