【プレスリリース】世界初!細胞核機能を持つ構造体を人工細胞内に再現~生命をつくる最前線、合成生物学の革新~

2025/5/20

【ポイント】

・ カエル卵の抽出液を用い、世界で初めてリポソーム内に細胞核を構築しました。
・リポソーム内で、核の内部にDNAが収納され、核内へのタンパク質の輸送が起こることを実証しました。
・真核細胞に近い人工細胞の実現に向けた重要なマイルストーンであり、ボトムアップ合成生物学・人工染色体技術などへの応用が期待されます。

【概要】
近年、細胞を模倣した構造や機能を持った人工細胞を実験室でボトムアップ構築する研究(ボトムアップ合成生物学)が注目されています。中でも、真核細胞の遺伝情報の保持・発現を担う「細胞核」の構築は大きな課題でした。これまで、細胞核の構築は主にアフリカツメガエル卵の抽出液を用いて試験管内や油中水滴内で行われていましたが、リポソーム内での構築は達成されていませんでした。
研究チームは、リポソームの内部において細胞核の構築に世界で初めて成功しました。カエル卵抽出液をリポソーム内に封入し、そこに精子由来のDNAを添加することで、DNAを包み込む核膜を形成しました。さらに、核膜孔複合体の形成や、それを介したタンパク質の核内への能動輸送を顕微鏡下で観察し、構造だけでなく機能も備えた人工細胞核の構築を実証しました。本研究成果は、従来困難とされてきたリポソーム内での核構築を可能とするものであり、ボトムアップ合成生物学の分野において、真核細胞に近い人工細胞構築の道を開く画期的なステップとして位置づけられます。

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