【プレスリリース】メカノケミカル処理により高性能な抗ウイルス材料を創出
-処理前後で最大5,000倍以上の抗ウイルス活性増大を実現-
【ポイント】
- マンガン系複合酸化物を合成し、エタノール中でボールミルによるメカノケミカル処理を実施
- メカノケミカル処理により単位面積当たりの抗ウイルス活性が、最大で5,000倍向上
- 低コストかつ高性能な新規無機抗ウイルス材料の開発に向けた新たな設計指針を提示
【概要】
東京科学大学(Science Tokyo) 物質理工学院 材料系の宮崎孝太郎大学院生(研究当時、現AGC株式会社)と中島章教授らの研究グループは、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)次世代ライフサイエンス技術開発プロジェクトとの共同研究で、エンベロープ型ウイルスに対するマンガン(Mn)系複合酸化物の抗ウイルス活性が、エタノール中でのボールミル粉砕によるメカノケミカル処理により大幅に向上することを発見しました。
本研究では、高い抗ウイルス活性を有する新規無機材料の開発を目指して各種Mn系複合酸化物(ZnMn2O4、CuMn2O4、YMnO3、BiMn2O5)に着目しました。これらの粉末試料を合成し、その後エタノール中でボールミル粉砕したところ、粒子径の減少だけでなく、粒子表面のさまざまな物理化学的性質が変化し、その結果として比表面積の増加の影響だけでは説明できないほど高い抗ウイルス活性が得られました。活性向上の程度はMnと組み合わせる元素に依存し、特にCuMn2O4では単位面積当たりの抗ウイルス活性が粉砕前の5,000倍を超える大幅な上昇となりました。
詳細な検討の結果、これはボールミル粉砕の過程で試料に導入されたルイス酸点の増加が主因であると考えられました。ウイルスはルイス酸点を介して材料表面に固定され、溶出イオンやMars–van Krevelen機構により脂質やタンパク質が分解・変性されることが示唆されました。また、CuMn2O4ではCu系材料特有の現象として、処理過程で生成する表面エトキシ基も抗ウイルス活性の向上に寄与していることが明らかとなりました。これらの結果は、エタノール中でのボールミル粉砕がMn系複合酸化物の抗ウイルス活性を効果的に増強する有用な手法であることを示しています。
本成果は、7月16日(現地時間)付で英国化学会の「RSC Mechanochemistry」誌に先行公開されました。
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