【プレスリリース】電場による磁化反転の新たな経路を発見-素子設計の自由度拡張、低消費電力メモリ素子の実現へ弾み-
【ポイント】
・マルチフェロイック物質BiFe0.9Co0.1O3における、印加電場と垂直な方向の磁化反転をはじめて観測。
・理論計算から、分極反転角度の違いが磁化反転の方向に強く関係することを示唆。
・素子設計の自由度の拡張による素子の高性能化・高集積化が期待。
【概要】
東京科学大学(Science Tokyo)物質理工学院 材料系の伊藤拓真大学院生(研究当時)、同 総合研究院 フロンティア材料研究所の重松圭助教、Hena DAS(ヘナ・ダス)特任准教授(神奈川県立産業技術総合研究所 常勤研究員)、東正樹教授らの研究チームは、住友化学次世代環境デバイス協働研究拠点において、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)と共同で、マルチフェロイック物質(用語1)であるペロブスカイト型(用語2)BiFe0.9Co0.1O3の単結晶薄膜を従来と異なる配向(用語3)で成長させることで、印加した電場と垂直な磁化成分を反転できることを実験・理論計算の両面から実証しました。
BiFe0.9Co0.1O3は、室温において、電場によって電気分極(用語4)が反転するのと同時に磁化(用語5)が反転する希少な物質であり、この性質を活かした超低消費電力の次世代磁気メモリの実現が期待されています。従来の研究では、走査型プローブ顕微鏡(用語6)を使って薄膜表面と垂直な方向(面直方向)に電場を印加することで、同じ方向に反転した磁化を検出していました。そのため、電場印加と磁化の方向は一致する必要があると考えられていました。
今回の研究では、薄膜の配向を変化させることで、薄膜表面に平行に電場を印加した場合でも、薄膜の面直方向の磁化が反転することを実証しました。また、電場による分極反転角度(用語7)の違いが、磁化反転の方向に強く関係することを明らかにしました。この発見により、BiFe0.9Co0.1O3を使った磁気メモリ素子の設計自由度が高まり、素子の高性能化・高集積化につながると期待されます。
本研究には、前田慶大学院生、李邱穆(イ・クモク)博士研究員、米国ノースイースタン大学のPaul Stevenson 助教、アリゾナ大学のMahir Manna大学院生、Surya Prakash Reddy大学院生、Sandhya Susarla助教、カリフォルニアバークレー大学のPeter Meisenheimer研究員(研究当時)、Ramamoorthy Ramesh教授が参加しました。本研究成果は、4月28日付(現地時間)の「Advanced Materials」に掲載されました。
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