平成31年度産学公連携事業化促進研究の結果概要

平成31年度産学公連携事業化促進研究の結果

研究課題①

次世代電磁環境適合性(EMC)試験に適用可能な光伝送システムの開発

株式会社多摩川電子、青山学院大学、KISTEC電子技術部

 IoT(モノのインターネット)、ロボット、AI等の技術革新に伴い電子化が急速に進み、第四次産業革命とも言われる状況にあります。これら電気製品の商品化にあたっては、電気的な安全性試験(EMC試験など)がメーカーに課されますが、近年の技術革新によりEMC試験のニーズは多様化しています。
 本研究では、青山学院大学が有する電磁波評価に関する研究シーズとKISTECのEMC試験技術を活用して、新しいEMC試験に対応可能な光ファイバを用いた光伝送システムの事業化に(株)多摩川電子が取り組んでいます。この光伝送システムは、光ファイバで高周波信号を伝送する光ファイバ無線(RoF)技術と駆動電力を光ファイバで伝送する光給電技術を同時に用い、従来の同軸ケーブルを用いた伝送システムと比較して、電気絶縁性と長距離伝送能力が非常に優れた、外来ノイズに強い計測システムを構築することが可能となります。初年度は、電波吸収体・電磁波シールド材などの測定システムを構築し、光伝送システムの有効性を確認できました。2年目は、受信感度とシールド性能を向上させた光給電RoFレシーバヘッドの製品化を行い、共同で記者発表を行いました。最終年度である令和元年度は、実環境を模擬した評価により、同軸ケーブルに対する優位性を検証し、展示会出展、学会発表、検証機貸出など積極的に普及活動を行い、販売に至りました。

 

光給電RoFレシーバシステム

光給電RoFレシーバシステム

同軸ケーブル(外来ノイズの影響大)

同軸ケーブル

(外来ノイズの影響大)

光給電RoFレシーバ(外来ノイズの影響なし)

光給電RoFケーブル

(外来ノイズの影響なし)


外来ノイズ環境下におけるスイッチング電源のノイズ強度分布測定


研究課題②

ラマン分光を用いた食品中の機能性成分の迅速定量装置の開発

株式会社分光科学研究所、東京大学、KISTEC化学技術部

 近年の健康ブームのもと、未病の予防の観点から特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品に代表される健康食品の市場規模が拡大を続けています。製品としての健康食品の機能性の科学的根拠を示し、品質安定性を保証するために、ビタミン等の機能性成分の迅速定量装置に対する需要が食品製造業界向けに見込めます。
 本研究では、(株)分光科学研究所の有するラマン定量分析技術、東京大学の有するガルバノ分光イメージング技術、KISTECの有する各種分光測定のノウハウを組み合わせ、(株)分光科学研究所による機能性成分のラマン迅速定量装置の事業化に取り組んでいます。初年度は、装置のプロトタイプ試作を進め、市販の栄養機能食品中の各種ビタミン類の含有量を精度よく迅速分析可能なことを実証しました。この結果を受け、2年目に生体試料の分子定量装置として受注し、初号機を納入しました。これに加え、試作機にガルバノスキャン機能を追加し、栄養機能食品などの迅速分析に有効なガルバノ広領域高速平均化測定の原理確認を行いました。最終年度となる令和元年度は、2年目の試作機で得られたミリメートル四方の測定領域をセンチメートル四方程度まで拡大することができ、市場からの要望仕様を満たす目処がつきました。これまでの開発結果は、記者発表や展示会出展、学会発表などを通じ、積極的な広報を進めています。

ラマン迅速定量装置

ラマン迅速定量装置

生体試料のラマン測定結果と定量解析の原理

生体試料のラマン測定結果と定量解析の原理


研究課題③

微粒子投射処理(WPC処理)を用いた、超硬合金金型の高機能化

株式会社不二WPC、国産合金株式会社、KISTEC機械・材料技術部

 寸法精度が要求される精密金型には、変形しにくく耐摩耗性が高い超硬合金が用いられていますが、靭性が低く割れやすい素材でもあります。

 本研究では、超微粒子投射処理(WPC処理)による表面改質について先進的な技術を有する(株)不二WPCの技術シーズとKISTECの焼結技術及び分析・評価技術を活用して、国産合金(株)の超硬合金金型を高機能化する技術開発を行いました。その結果、初年度及び2年目でWPC処理による超硬合金の機械的性質向上を実現し、最終年度である令和元年度は超硬合金の表面の高機能化と、超硬合金に代わる材料として緻密で機械的性質の優れたホウ化物硬質材料の開発を実現できました。

ホウ化物講師る材料の外観とその特性


研究課題④

選択的無電解めっき法による金属パターン形成法の高度化

関東学院大学、株式会社アズマ、KISTEC電子技術部

 Society5.0では、身近なあらゆるものがインターネットにつながり、無線を介して莫大なデータがやり取りされます。情報通信を支える電子部品であるプリント基板分野では、高周波信号に対応できる液晶ポリマー(LCP)などに対するパターン形成技術が求められています。

 本研究では、関東学院大学が有する環境にやさしいCuめっき技術とKISTECの表面分析技術を活用して、LCPに直接金属パターンを形成する技術の開発に(株)アズマと取り組み、1時間当たり3μmという高速めっきを可能にしました。最終年度である令和元年度は、これらの成果が認められ、文部科学省所管のJSTが公募した2019年度A-STEP機能検証フェーズ試験研究タイプに採択されました。今後は、プリント配線板製造の方法の確立を目指し、更に研究開発を進める予定です。

めっき速度の高速化

めっき速度の高速化


研究課題⑤

感光性SAMを用いたケージド細胞培養基板の実用化とエレクトロニクス材料への展開

神奈川大学、ワオデザイン株式会社、国立研究開発法人物質・材料研究機構、株式会社ウォーターケム、KISTEC化学技術部

 平成26年9月に世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われる等、再生医療に関する研究は着実に成果を上げています。このようなライフサイエンス分野の発展を支える研究ツールとして、生体組織を模倣する細胞パターニング・培養技術が求められています。

 本研究では、神奈川大学と(国研)物質・材料研究機構の細胞パターニング・培養に関する研究シーズとKISTECの分析技術を活用して、ニイガタ(株)と(株)ウォーターケムによる事業化に取り組んでいます。最終年度である令和元年度は、感光性SAM中間体の大量合成を可能にする新たな合成ルートを確立、また、感光性SAMを塗布して感光性膜を基板上に形成し、細胞培養基板としての保存安定性、機能評価等を行うとともに、サンプル出荷により実用化に向けた課題などを明らかにしました。

光応答細胞培養皿実施例
光応答細胞培養皿実施例


研究課題⑥

不均一加熱によりカーボン・カーボン複合材料(C/C)と金属材料のろう付を実現する新規工業炉の開発

東海大学、関東冶金工業株式会社、KISTEC情報・生産技術部

 航空宇宙関連分野等に利用されている炭素繊維強化炭素複合材料(C/C材料)は、良好な耐熱性、熱伝導性と高い比強度、弾性をあわせ持つ優秀な材料です。この先端材料の用途を拡大するために、金属材料との信頼性の高い接合技術が求められています。

 本研究では、KISTECのレーザー加工機を用いて金属材料上にろう材を堆積し、東海大学が考案したろう付技術を活用して、関東冶金工業(株)で専用工業炉の検証実験を実施しています。2年目までで関東冶金工業(株)の実験炉を用いたSUS304とC/C材料の接合が可能であることを明らかにし、最終年度の令和元年度はその接合条件の適正化によりC/C材料の健全な接合が可能であることを明らかにしました。今後、新型工業炉の開発に関する技術課題解決を目的として、2020年5月のA-STEP産学共同本格型への申請を計画しています。

ろう付部上面写真

ろう付部上面写真

 

ろう付部断面写真

ろう付部断面写真


研究課題⑦

メカニカル速度リミットロック装置の開発

ダブル技研株式会社、東海大学、KISTEC情報・生産技術部

 近年、人間共存型ロボットは人の近くで作業を行うため、ロボットのコンピュータやセンサーが故障した場合、人とロボットが衝突してしまう可能性があり、その危険性がロボットの商品化や普及を妨げています。
 そこで本研究では、ロボットの暴走事故を防ぐために、東海大学甲斐研究室で開発された、電気を使わない受動的機械要素(歯車やバネやダンパー)のみで構成されるという特徴を持つメカニカル速度リミットロック装置を基に、KISTECとダブル技研(株)が加わり実用化研究を実施しました。初年度は適用範囲の拡大のため小型化や停止時の衝撃吸収機能の付加を実現し、今年度はさらなる応用範囲を広げるための実用化検証として、車椅子に安全ブレーキとして適用したものを製作し、実験結果と共にテクニカルショウヨコハマ2020に出展して広くユーザーニーズを取得しました。

安全ブレーキ付き車椅子
安全ブレーキ付き車椅子

 

メカニカル速度リミットロック装置を適用した安全ブレーキ

メカニカル速度リミットロック
装置を適用した安全ブレーキ

 テクニカルショウヨコハマ2020への試作品展示


研究課題⑧

牛の人工受精受胎率の向上を目指した運動良好精子選別と凍結工程のシステム化開発

株式会社協同インターナショナル、横浜国立大学、KISTEC電子技術部

 海外で和牛肉が人気商品となったことに伴い、和牛肉の生産に不可欠な和牛の子牛の増産が緊急の課題となっています。しかしながら、繁殖農家の減少や和牛の受胎率の低下などにより、和牛の子牛の増産は難しい状態となっています。

 本研究では、横浜国立大学が保有する解析・評価技術とKISTECが保有する微細加工技術を活用して、(株)協同インターナショナルが和牛の子牛の増産技術に関するシステム化に取り組んでいます。初年度はシステムの基本となる牛の運動良好精子選別用デバイスのプロセス開発に取り組み、2年目の令和元年度はその評価結果からデバイス構造を抜本的に見直して牛の運動良好精子を効率的に集められるデバイスの形状を見出しました。また、牛精子の凍結工程における問題点を抽出しました。

試作した運動良好精子選別用デバイスの評価

試作した運動良好精子選別用デバイスの評価


研究課題⑨

超高真空製膜装置用脱着式ポータブル走査型電気化学セル顕微鏡の開発

バキュームプロダクツ株式会社、神奈川大学、金沢大学、KISTEC川崎技術支援部

 Liイオン電池材料やペロブスカイト材料は大気中では急激に劣化するため、作製直後に真空もしくは不活性ガス中での評価が必要となります。

 本研究では、金沢大学が持つナノ領域における電流・電位計測、局所的な充放電マッピング等の評価が可能な走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)と神奈川大学が持つコンビナトリアル試料作製技術を組み合わせることで、試料作製から評価まで一貫して高速で処理できる装置を開発することを目的としています。初年度は真空チャンバーに組み込んだSECCMを開発し、2年目となる令和元年度はSECCMに用いる真空用ステージ(基板側、電極側)の設計・製作を行うとともにレーザー堆積装置(写真)との接合・受け渡し動作試験を実施しました。今後は、動作試験の結果を基に装置の改良を進め、バキュームプロダクツ(株)が製品化を目指します。

レーザー堆積装置

レーザー堆積装置


研究課題⑩

バインダジェット3Dプリンタを用いたセラミックポーラス体の造形とその焼成

株式会社吉岡精工、株式会社ExOne、KISTEC機械・材料技術部

 近年、セラミックポーラス体を利用したポーラスチャックが、半導体製造装置分野で多く採用されており、その高品質化のためにセラミックポーラス体の異物や欠陥の管理は重要な課題です。また、一般的なセラミックの製造工程でポーラス体を製造するには、気孔を発生させるための造孔材や有機バインダの添加等が必要となり、工程が複雑になります。

 本研究では、ポーラスチャックを設計・製造・販売している(株)吉岡精工と三次元積層造形技術(バインダジェット3Dプリンタ)を有する(株)ExOneが、セラミックスに関する様々な製造技術や分析・評価技術を有するKISTECと協力して、高品質なセラミック製のポーラスチャックをより簡易な工程で製造する新たな技術を開発します。令和元年度は、アルミナ粉末をプリンタで積層造形し、その成形体の脱脂・焼結を行い、本製造プロセスによって、セラミックスポーラス体が製造可能であることを確認できました。今後はポーラスチャック部材として使用するために必要な気孔率と強度を両立させること、さらに両者を自由に制御する技術を開発することが目標です。

バインダジェット3Dプリンタで成形したアルミナ多孔質焼結体
バインダジェット3Dプリンタで成形したアルミナ多孔質焼結体の内部組織

バインダジェット3Dプリンタで成形した
アルミナ多孔質焼結体とその内部組織


研究課題⑪

ダイレクトメタノール燃料電池の実用化に向けた試作研究

アットドウス株式会社、ヨダカ技研株式会社、KISTEC化学技術部

 電気浸透の原理を用いたポンプ(EOポンプ)は、機械的な可動部分がないため脈動がなく、極微小流量から安定した送液が可能であるという特徴があります。また、密閉構造であるため空気の混入や液漏れ、コンタミの心配がなく医療機器向けを始め様々な分野への応用が期待されています。しかしながら、EOポンプの駆動には数十ボルトの比較的高い電圧が必要になり、ウェアラブル用途や携帯・可搬型用途では、その電源が問題となっていました。

 本研究では、アットドウス(株)とヨダカ技研(株)が共同で開発を進めてきたEOポンプに対し、電源としてKISTECのマイクロ燃料電池を用いることで、これまでにない新たなマイクロデバイスの開発に取り組んでいます。令和元年度はEOポンプの耐久性の改善とマイクロ燃料電池の集積化を行い、これを組み合わせた試作品をテクニカルショウヨコハマ2020へ出展しました。令和2年度は、EOポンプとマイクロ燃料電池の一体化を進め、様々な用途展開を検討いたします。その一つとして試作したEOポンプを燃料供給に用いることで、携帯機器向けのより高出力なダイレクトメタノール燃料電池の試作を行います。

燃料電池駆動型ポンプの試作品
燃料電池駆動型ポンプの試作品


研究課題⑫

省力化・自動化システムを備えたペロブスカイト太陽電池製造及び評価装置の開発

桐蔭横浜大学、ペクセル・テクノロジーズ株式会社、アステラテック株式会社、KISTEC川崎技術支援部

 近年、光電変換効率の高さからペロブスカイト太陽電池が注目されています。ペロブスカイト太陽電池は溶液塗布による作製が可能なため大面積化と低コスト化とを両立できる次世代の太陽電池として期待されています。しかし、現時点では手作業による作製に頼っているため再現性と歩留まりが低く、研究の足枷になっている状態です。

 本研究では、最適作製条件を組込んだペロブスカイト自動作製装置を開発することを目的としています。作製の自動化が実現できれば、経験値に関係なく高性能の成膜が可能となり、封止技術の向上や耐久性評価などを含めて研究を大幅に加速させることができます。第一段階として令和元年度は電動で滴下するピペットとスピンコーターと組み合わせることにより成膜条件の最適化を進めています。

自動滴下ピペットを備えたスピンコーター

自動滴下ピペットを備えたスピンコーター


研究課題⑬

光触媒性を有する最先端コート剤の開発

株式会社超越化研、東京大学、KISTEC川崎技術支援部

 ゾル-ゲル法で透明かつ多孔質のシリカ薄膜を形成できる超越コート剤は、基材に撥水性、撥油性、光透過性、耐候性、耐摩耗性、硬度、抗菌性など様々な機能を付与できます。さらに、光照射下で下地の汚れを浄化し、抗菌性を持つコート液が見つかり、多様な用途が期待されています。

 本研究では、KISTECの光触媒評価技術及び東京大学の微細構造解析技術による機能解明の知見を活用して、この超越コート剤の光触媒性能を向上させ、市場品にない撥水性と吸着性を活かした最先端コート剤を開発することを目的としています。令和元年度は、光触媒の原料となる有機チタン量を増やした新しいコート剤を試作し、性能評価を行ったところ、メチレンブルーの湿式分解性能を有することが明らかとなりました。しかし、ガス分解性能および湿式でのフェノール完全分解においては効果が確認できず、さらなる性能の向上および機能解明が必要となります。

試作コート剤によるメチレンブルー濃度変化

試作コート剤によるメチレンブルー濃度変化