令和2年度産学公連携事業化促進研究の結果概要
令和2年度産学公連携事業化促進研究の結果
研究課題①牛の人工受精受胎率の向上を目指した運動良好精子選別と凍結工程のシステム化開発 株式会社協同インターナショナル、横浜国立大学、KISTEC電子技術部 |
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海外で和牛肉が人気商品となったことに伴い、和牛肉の生産に不可欠な和牛の子牛の増産が緊急の課題となっています。しかしながら、繁殖農家の減少や和牛の受胎率の低下などにより、和牛の子牛の増産は難しい状態となっています。
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樹脂の親水化処理が牛精子に与える影響を |
研究課題②超高真空製膜装置用脱着式ポータブル走査型電気化学セル顕微鏡の開発 神奈川大学、バキュームプロダクツ株式会社、金沢大学、KISTEC川崎技術支援部 |
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Liイオン電池材料やペロブスカイト材料は大気中では急激に劣化する為、作製直後に真空もしくは不活性ガス中での評価が必要となります。本研究では、ナノ領域における電流・電位計測、局所的な充放電マッピング等の評価が可能な走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)とコンビナトリアル試料作製技術を組み合わせることで、試料作製から評価まで一貫して高速で処理できる装置の開発を目的としています。初年度は真空チャンバーに組み込んだSECCMの開発、2年目はSECCMに用いる真空用ステージの設計・製作を行うとともにレーザー堆積装置との接合・受け渡し動作試験を実施しました。 |
装置全体図 |
研究課題③バインダジェット3Dプリンタを用いたセラミックポーラス体の造形とその焼成 株式会社吉岡精工、株式会社ExOne、KISTEC機械・材料技術部 |
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近年、セラミックポーラス体を利用したポーラスチャックは、半導体製造装置分野で多く採用されるようになり、半導体部品の小型化や軽薄化によりセラミックポーラス体に求められる品質も高度化しております。セラミックスの製造は原料粉末の調整、粉末成形、焼結の工程を経るのが一般的です。この工程でポーラス体を製造するには、気孔を発生させるための造孔材や有機バインダの添加等が必要となり、工程が複雑になります。 |
アルミナの粒度を変化させた時の気孔率と組織の変化 |
研究課題④ダイレクトメタノール燃料電池の実用化に向けた試作研究 アットドウス株式会社、ヨダカ技研株式会社、KISTEC化学技術部 |
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電気浸透の原理を用いたポンプ(EOポンプ)は、機械的な可動部分がないため脈動がなく、極微小流量から安定した送液が可能という特徴があります。また、密閉構造のため空気の混入や液漏れ、コンタミの心配がなく医療機器向けを始め様々な分野への応用が期待されています。しかしながら、EOポンプの駆動には数十ボルトの比較的高い電圧が必要になり、ウェアラブル用途や携帯・可搬型用途では、その電源が問題となっていました。 |
マイクロ燃料電池とEOポンプの接続の様子 |
研究課題⑤省力化・自動化システムを備えたペロブスカイト太陽電池製造及び評価装置の開発 桐蔭横浜大学,ペクセル・テクノロジーズ株式会社,アステラテック株式会社,KISTEC川崎技術支援部 |
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近年、発電性能が高く、薄膜化フレキシブル化が期待できるペロブスカイト太陽電池(PSC)が注目されています。PSC作製は真空プロセスが不要で、溶液塗布による工程であるため多くの企業が参入を検討しますが、現時点では手作業による作製に頼っているため再現性と歩留まりが低く、研究の足枷になっている状態です。 |
ドラフト内に設置したドライボックス |
研究課題⑥ステンレス表面の改質が抗菌作用に与える影響の評価と事業化 株式会社サーフテクノロジー、学校法人関西大学、KISTEC研究開発部 |
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ウイルスや細菌の感染リスクを下げ、生活環境を向上させることは非常に重要な課題です。そのため、様々な抗菌剤や抗ウイルス剤を塗布、練りこみをするような研究開発が進められていますが、薬剤による感染制御は薬剤耐性菌や変異ウイルスの産生につながる可能性があり、社会的な問題となることがあります。その点で、マイクロディンプル処理(MD処理)を行ったステンレス表面による抗菌作用は特別な薬剤を使用することがないため、耐性菌や変異ウイルスの産生を予防しながら、感染リスクを下げる可能性が高く、非常に有効な抗菌加工品となる可能性が高いものです。本研究では、その表面処理の状況と抗菌作用を深く検討することで、効率的な抗菌加工を発揮する製品開発とその事業化を目的に検討を行っています。 |
MD処理を行った表面画像 各種MD処理面の大腸菌に対する抗菌力評価試験結果 |
研究課題⑦超長寿命形状記憶合金「ウルトラニチノール」の実用化に向けた熱処理工程開発 東京工業大学、株式会社古河テクノマテリアル、KISTEC機械・材料技術部 |
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形状記憶合金には超弾性と形状記憶効果がありますが、実用化はほぼニチノール合金の超弾性を利用したものに限られています。これは、形状記憶効果を利用した場合、繰り返して使用することにより機能劣化が起きやすいことに原因があります。東京工業大学により開発された「ウルトラニチノール」は、この機能劣化の問題を解決するために開発された合金で非常に高い耐久性を持っており、実用化のために熱処理工程の開発が求められています。 |
作製したインゴットの外観 |
研究課題⑧極短深紫外ファイバーレーザによる基板のマイクロ加工装置の研究開発 株式会社クォークテクノロジー、株式会社ファシリティ、KISTEC電子技術部 |
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現状のレーザによる加工は近赤外域光が主流であり、自動車をはじめとする金属・ガラス等の加工に用いられています。しかし、有機材料や微細加工には限界があり、今後は深紫外域レーザの活用が期待されており、さらに加工精度や材料へのダメージ低減等の観点から短パルスなレーザ加工のニーズが高まることが期待されています。本研究では、ファイバーレーザを光源とする事で小型化を狙い、ナノ秒よりも極短パルス化した深紫外線を用いたコンパクトなマイクロ加工装置を開発しています。 |
レーザ加工装置開発の実験風景 開発中の小型UVレーザ発振部 |
研究課題⑨高速伝送用FPCの製造技術及び電磁ノイズ低減技術の研究開発 山下マテリアル株式会社、青山学院大学、KISTEC電子技術部 |
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通信インフラの世界では第5世代移動通信システム(5G)のサービス開始に伴い、100G、400G、800Gbit/sの高速伝送大容量化に向けてデータセンターなどの機器間を繋ぐ光トランシーバモジュールの高速化が進んでおり、薄く屈曲性を持つフレキブルプリント配線板(FPC)にも1配線当たり、数G~100Gbit/sの伝送を可能とする性能への要求が高まっています。 |
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研究課題⑩電解ミスト抑制法の開発 合同会社アイル・MTT、旭産業株式会社、KISTEC化学技術部 |
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クロムめっきの工程では水の電気分解にともなって水素ガスや酸素ガスが発生します。そしてこれらのガスとともにめっき液が飛沫として同伴し、有害な6価クロムを含むミストがめっき槽から飛散します。6価クロムは鼻潰瘍、鼻中隔穿孔、気道障害、皮膚障害等の健康障害を引き起こし、ヒトに対して発がん性もあるため、作業環境上、何らかの対策が必要となります。 |
通常の電解めっき 泡沫で表面を覆った時の電解めっき |